ネパールのために日本の教訓をいかせ -ネパールヒマラヤ・スタディツアーを実施-
2007年8月2日〜8月12日にかけて、ヒマラヤ保全協会・夏のスタディツアー2007を、「ネパール・ヒマラヤの環境保全 〜専門家によるレクチャーつき〜」と題して実施した。一般参加者は4名、現地ボランティア1名、リーダー1名、サブリーダー1名の計7名で、ネパール西部ミャグディ郡のナルチャン村をめざした。途中、ベニからナルチャン村までのカリガンダキ川の経路は、現在、道路工事が急速にすすんでおり、地形の様変わりはいちじるしかった。また、工事現場をあるくということで危険な箇所もあった。斜面をきりくずす道路工事は、あらたな地滑りを誘発しており、急峻な山岳地域の開発の難しさ、問題を目の当たりにすることができた。
ナルチャン村での滞在は1泊2日とみじかいものであったが、ヒマラヤ保全協会の「生活林づくりプロジェクト」を中心に見学し、植樹もおこなった。ホームステイ先では参加者各自でホストファミリーの皆さんと心あたたまる交流をした。
今回のツアーは雨季(モンスーンの時期)に実施したので、ヒマラヤの雨季(モンスーン)の世界を実体験することができた。ただし、ツアー期間中は天候にめぐまれ、アンナプルナ山群やニルギリ山を見ることができた。ヒマラヤの世界は、雨季と乾季のコントラストがいちじるしい。それら両者を実体験してこそ、本当のヒマラヤを理解することができる。
今回のスタディツアーは非常に短期間で、ヒマラヤ保全協会の事業地まで行ってしまう企画であったが、それでもかなりの効果があがることが証明された。
日程表

2007年8月9日、ナルチャン村からポカラにもどり、参加者全員でスタディツアーのまとめのミーティングをおこなった。議論をしながら各自が意見を「KJラベル」に書きだし、それらを図解化、重要度にしたがってランキングし、最後に、もっとも重要なポイントを抽出した。以下は、それらを提言として文章化したものである。
ネパール人は、「ネパールはまずしいです。日本にくらべて何十年もおくれています」と言っていたが、このようなことを聞くのは残念であり、こうした意識は変えた方がよい。文明化がおくれていたとしても、それは決して悪いことではないし、ネパールのオリジナリティをいかしていくことが大切である。そのことをわかってもらいたい。ネパール人の中には、本当はまずしくないのに、まずしいという“思い込み”があるのではないだろうか。そもそも、ゆたかさ・まずしさということは一本の物差しではかれるものではなく、その基準をつくってしまうのがよくない。
日本は、経済的な発展を優先しすぎたために、古き良きものをこわしてしまった。以前、保存されている日本家屋の中をみたときに、「これは何につかうんだろう?」などと海外の文化をみているような気持ちになってしまったことがあり、すごく残念な気持ちになった。ネパールの人々にはそんな気持ちになってほしくない。ネパールでは、経済的発展を最優先することにより、日本のようにふるいものをこわしていくようなことはさけてほしい。伝統文化の保存はむずかしいかもしれないが、それをおこなわないとすべてが均一化し特色がなくなってしまう。
今こそ、私たち日本人は、日本の伝統文化を破壊したことを“あやまち”としてみとめ、その教訓をネパールのためにいかしていくべきである。現在の日本は、各所で文化的破壊がいちじるしく、それは日本人の精神文化をも破壊してしまい、心をやむ日本人を多数うみだしてしまった。
それでは、どのようにして伝統文化を保全したらよいのだろうか。その参考例は日本にもある。たとえば、日本の川越“小江戸”のようなやり方は大いに参考になる。一定の区域をさだめてその中では、町並みや景観もふくめてすべてを保全する。そして、そこは単なる保全地区ではなく観光地としても発展させる。実際、小江戸には、全国から多くの観光客がおとずれているのである。
ネパールは基本的には観光立国である。ただ単に、近代化をすすめるのではなく、観光立国を政策として明確にうちだし、観光産業の発展につくすべきである。日本の小江戸のようなやり方は大いに参考になるはずである。
そのとき、私たち日本人は、みずからの伝統文化を破壊してしまった教訓と、小江戸のような文化保全地区のやり方という二つの側面から、ネパールの発展のために協力できるはずである。
(注)上記文章は次に発表した。「ヒマラヤ保全協会・夏のスタディツアー2007 報告書」2007年9月23日、特定非営利活動法人ヒマラヤ保全協会編集・発行。
▼(特活)ヒマラヤ保全協会のスタディツアーのご案内はこちらです
http://www.ihc-japan.org/event/tour.html
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