ネパール・ヒマラヤ・国際協力

〜 住民主体の環境保全 〜 《ヒマラヤ保全協会会員むけのブログです》 [Admin]

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ヒマラヤ保全協会事務局長

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  エコ・プロジェクト、2008年度の現地活動がはじまる -W理事、ポカラ到着-

 環境専門家でヒマラヤ保全協会理事のWさんがポカラに到着しました。今回のミッションは「エコ・プロジェクト」(ゴミ処理・観光ルート美化)であり、ネパール有数のトレッキングルートであるアンナプルナ山麓、特に、タトパニ(ネパール語で温泉という意味)およびその周辺でゴミ処理・環境問題にとりくみます。タトパニは、温泉があるため、非常に多数のトレッカーがおとずれ、当然、ゴミがたくさん排出されて環境問題がクローズアップされています。
 Wさんは、ヒマラヤ保全協会ネパール・スタッフのリル=プンさんとともに、7月5日にポカラを出発、10日間にわたり現地活動をして、7月15日にポカラにもどる予定です。

  エベレストの登頂など、もう一つの挑戦に比べれば取るに足らない -エドモンド=ヒラリー卿-

「エベレストの登頂など、もう一つの挑戦に比べれば取るに足らない。その挑戦とは、ネパールで暮らす、私のシェルパの友人たちの生活を改善し、ヒマラヤの文化と美しさを守ることだ」(エドモンド=ヒラリー卿)
 『極限に挑む』(ナショナル ジオグラフィック 冒険・探検写真集、日経ナショナルジオグラフィック社、2007年)には、地球を解き明かす“未踏の世界”への挑戦の記録が現地の写真とともに解説されています。これを見ていると、世界最高峰エベレストが、北極、南極につく第三の極限であり極地であることがよくわかります。世界の探検家たちは、命をかけて極限あるいは極地をめざしました。エベレストでは男女あわせて186人が亡くなっています。
 エドモンド=ヒラリー卿は、その後、シェルパ民族を支援するプロジェクトに力をそそぎ、教育や医療の充実に尽力しました。彼は、力と無私の精神・謙虚さをかねそなえた類いまれなる人格者として多くの人々に記憶されています。

  保護林と生活林の間に一線をひき、役割分担を明確にしていく

「ネパールにある森林の20パーセントは既に国立公園や保護区に指定されている。これらの森の生態系を保護することは重要だが、いたずらに村の森を保護区とすることは控えなければならない。(中略)森林利用グループが管理する森では、一定の環境基準を遵守しているかぎり、伐採を含め森林利用を制限すべきではい」(注)。森を守ることと、人々の生活を守り村の発展をかんがえることは不可分であると主張されています。
 自然保護だけを目的にするのであれば保護区(保護林)を増やせばよいのですが、それだけだと、ヒマラヤ山村の人々は生活していけなくなってしまいます。彼らは、森林に大きく依存したライフスタイルをもっているからです。
 ヒマラヤで森林保全事業をすすめていく場合、保護林と利用できる森、このジレンマはどこかで解決しなければなりません。
 そのためには、両者の間のどこかに一線をひき、役割分担を明確にしていく必要があるでしょう。保護林では、生物多様性の保全、原種の保護といったことが目的になりますが、村人が利用できる森では、木をそだて森をまもってこそ自分たちの生活が改善されていくといった、利用してこそ まもられるという仕組みをつくることが必要です。
 結局、総合的・長期的にこの課題をとらえて、森林がこれ以上破壊・後退することなく増えていくようにすることがもとめられます。未来にむかって問題を解決していくことこそ重要です。
 ヒマラヤ保全協会では、一定のルールのもとで村人が利用できる森のことを「生活林」と呼んでいます。

(注)久保英之著『アジアの森と村人の権利 -ネパール・タイ・フィリピンの森を守る活動-』現代書館、2003年。

  住民が主体的に参加する森林保全事業は、地球温暖化の緩和策としても重要である

 地球温暖化を緩和するための緩和策として、森林によるCO2(温室効果ガス)吸収が重要であることは、現在ではひろく知られています。樹木は、数十年から数百年にわたってCO2を吸収し、炭素を体内にたくわえつづけます。
 IPCC第4次評価報告書では、森林・木材による温暖化緩和策として、「1. 森林面積の維持・増加、2. 個別森林レベルでの森林蓄積の維持・増加、3. 景観レベルでの森林蓄積の維持・増加、4. 木材製品の活用」をあげています。ここで注目すべきことは、CO2を吸収させるために森林面積を増加させるだけでなく、同時に、森林によるCO2吸収・蓄積を減少・劣化させないように、森林を健全に維持・管理することが強調されているということです(注)。
 つまり、森林は再生させるだけでなく、できあがった森林をいかにうまく まもっていくかということが重要だということです。
 このような観点からいっても、ヒマラヤ保全協会が長年おこなってきている、住民の主体的参加による植林・森林保全事業には大きな意義があります。つまり、私たちの仕事には、植林をして森林を増やすだけでなく、一度できた森林が、地元の住民みずからの手でまもられていく仕組みができあがっているからです。これは、苗木をそだて荒廃地に植える初期段階から、住民が主体的に事業に参加するようにしているからできるのであり、これによって持続的・永続的な森林保全が可能になるのです。これが私たちが主張する「住民主体の森林保全・環境保全」の実践形態にほかなりません。
 このように、ヒマラヤ保全協会の植林・森林保全事業は、地球温暖化緩和策としても大きな意味をもつようになってきています。

(注)松本光郎「森林による二酸化炭素の吸収」科学, 78(特集 温暖化への対応 日本のテクノサイエンス), 536-539, 岩波書店。

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