ネパール・ヒマラヤ・国際協力

〜 住民主体の環境保全 〜 《ヒマラヤ保全協会会員むけのブログです》 [Admin]

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ヒマラヤ保全協会事務局長

管理人  [ ヒマラヤ保全協会事務局長 ]

ようこそ「ネパール・ヒマラヤ・国際協力 」へ。ヒマラヤ保全協会事務局長のブログです。

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  「IHCエコ・プロジェクト」の概要を協議、今年度事業の見通しを得る

Tatopani2.jpg 「IHCエコ・プロジェクト」の環境専門家のW理事が帰国しました。今回は、本年度第1回目のネパール派遣で、事業地のタトパニとナルチャンを訪問し、IHCのプロジェクトの概要(生活ゴミ委員会の設立、環境教育ワークショップの実施、ゴミ箱の整備とゴミピットの建設)を協議し、今年度の事業の見通しを得ました。
 以下は、W理事からの報告です。

(1)タトパニ
 タトパニに到着した7月4日、まず宿泊先のホテルのオーナーに今回の事業計画を説明し、協力していただく了解を得た。そして翌5日朝、タトパニ全体から18名の村人に学校に集まっていただき理解を求めた。その結果、タトパニは50強の世帯数の小さな村ではあるが、ベニ側の9区とジョムソン側の1区とで状況も異なることから1区と9区とで個別に検討することとなり、9区15名、1区32名の参加者を得て検討を行った。その結果疑問点・反対意見などはあったが、大勢としては賛同を得ることができた。ただし、二人のキーパーソンが不在だったことから、8月のS理事の訪問に向けて、交渉を継続することになった(交渉はIHC Nepal)。

<主な疑問点・反対意見>
・ポスターが配布されても、行動が定着しない。
・タトパニは小さな村で共有地も少なく、ゴミ集積場を設置する場所が限定されている。すぐに集積場を掘る場所がなくなる。
・ゴミ集積場がいっぱいになったら、次の集積場を設置する費用は出るのか。
・ゴミの収集は本来、お金を払って人を雇ってやるべきだ。そのお金は出るのか。

<タトパニのキーパーソン>
a)デベンドラ・バトチャン(トレッキング・ロッジのオーナー、ソーシャル・ワーカー)
b)ブワン・ガウチャン(ダウラギリ・ロッジのオーナー、温泉管理委員会委員長)
c)アニール・ヒラチャン(カマラ・ロッジのオーナー、学校運営委員会委員長)
d)アトマ・トゥラチャン(ホテル・ヒマラヤのオーナー、ヘルスポスト支援委員会委員長)
e)ドシュラッタ・コモチャラ(赤十字地域委員会委員長)
f)ソム・プン(ソーシャル・ワーカー)
g)シャン・ブラ・ロノ(ソーシャル・ワーカー)
h)バシェドラ・バトチャン(母親グループ代表、トレッキング・ロッジのオーナー夫人)
i)デワル・クマリ・カルマヤリャ(母親グループ代表)
j)シャンティ・ガウチャン(母親グループ代表)

 ブワン・ガウチャンとアニール・ヒラチャンが不在。この二人が最重要人物との情報もあるが、タトパニには明確な村長などは存在しない模様。

<現在のゴミの投棄場所>
・1区:ヘルスポスト向かいの斜面および川沿い
・9区:学校の下流側の斜面および川沿い

 ただしガラス瓶については、ビール・コーラ類Rs1/本、アップルブランディ用Rs2/本で売却できるので、投棄はしない。また金属なども売却可能なものがあるのでそれらも投棄しない。(回収業者の名前と連絡先は調べて教えてもらうことになっていたが、お互いに忘れてしまい、不明)

<カリガンダキ川沿いの道路建設の影響について>
 タトパニの人々は、観光客が減少するので悪影響と考えている。さらにACAPがタトパニ・ジョムソン間のトレッキング・ルートを新たに作ることを考え始めており(まだF/S前)、さらに観光客が減少する懸念がある。

(2)ナルチャン
 ナルチャンについては、現在森林保全事業が実施されていることからその事業に関する会合の場などを通じすでに事業の概要が伝えられて合意があった。今回は10名の村人に集まっていただき、再度説明し、生活ゴミ委員会の設置(メンバー構成など)や8月のワークショップなどについて検討した。


  ネパール人をスポイルしないことが重要である

 NPO法人 山の自然学クラブ主催の講座「ネパールにおける自然保護活動の現状」(講師:宮原巍さん)が開催されました(会場:環境パートナーシップ)。
 宮原さんは、ヒマラヤ観光開発株式会社の社長で、先のネパール制憲選挙に立候補されました。
 宮原さんは、40年前にヒマラヤに魅せられ、エベレストの見える3880mの丘にホテルを建てることをおもいたち、建設にあたっては、自然保護と環境による地域の発展を問題にしたそうです。
 また、海外からの援助により、ネパール人をスポイルしてしまっている(甘やかしてだめにする)ケースが多いので、そのようなことがないよう援助は慎重におこなわなければならないことが議論されました。

  Google Earth をつかえばヒマラヤを簡単に鳥瞰できる

 Google Earth をつかうと、ヒマラヤの3D画像を簡単に無料で見ることができます。これは、Google Earth 4.3をダウンロードしてつかいます。衛星画像・地図・地形を見事にとらえることができ、ヒマラヤがいかにダイナミクスに富んでいるかよくわかります。見るアングルも自由にえらべます。マウスホイールをつかって、視点を上下に移動させるヘリコプター・ビューもできます。地形を強調して表示させることも可能です。
 このように、Google Earth はヒマラヤを自在に鳥瞰することを実現しました。一方で、世界でもっとも変化にとむ地形をもつヒマラヤでつかってこそGoogle Earthの真価が発揮されるということもいえます。

> Google Earth

  今後の世界に向かうべき真の国際協力のあり方を身を以って示した -ブータンの農業につくした日本人、西岡京治さん-

 ナショナル ジオグラフィック2008年3月号には、ブータンの農業につくした西岡京治さんが紹介されています(注)。
 西岡さんは、1964年、コロンボ計画(アジア太平洋地域の経済発展を目的とする)の農業専門家として、海外技術協力事業団(現・国際協力機構)からブータンに派遣され、28年間にわたってブータンの農業指導をされました。1980年には、その現実的で持続可能な手法が高く評価され「ダショー」(最高の人の意味)の称号をブータン国王からおくられました。
 そもそも西岡さんは、1958年、川喜田二郎(ヒマラヤ保全協会創設者)がひきいる北西ネパール学術探検隊に隊員として参加、ヒマラヤにみせられたといいます。そして、これからの時代は国際技術協力が重要であると確信し、ブータンに生涯をかけました。
 川喜田二郎は、「西岡君は、今後の世界に向かうべき真の国際協力のあり方を身を以って示した」とかたっています。
 西岡さんは1992年にブータンで急逝されましたが、ともに働いたブータンの人々は彼の遺志をつぎ、立派な農業専門家として活躍しているそうです。

(注)「ブータンの農業に尽くした日本人」ナショナル ジオグラフィック2008年3月号、150ページ、日経ナショナル ジオグラフィック社。

  ブータン難民(ブータンをはなれたネパール系住民)は10万8000人もいる

「ディマルは床のない掘っ立て小屋に座り、ブータンに戻れる日を待ちわびている」(注)。敬虔なヒンドゥー教徒であるディマルは、ブータンで半世紀以上も暮らしていましたが、現在は、ネパール東部の国連難民キャンプで生活しているといいます。
 19世紀から20世紀初頭にかけて、ブータン南部低地に多くのネパール系住民が住みつき、1960年以降も肉体労働や不法移民として多くのネパール人がブータンに流入しました。その後、ブータンのチベット系住民(仏教徒)とネパール系住民(ヒンドゥー教徒)との不和・対立が生じ、ブータンを逃げ出したり退去するネパール系住民が多数でました。ブータンをはなれたネパール系住民は難民となり、現在10万8000人、一人も帰国が許されておらず、ブータンにとどまるネパール系住民も大まかな推計で15万人もいるそうです。
 
(注)「岐路に立つブータン『国民総幸福量』政策の行方」ナショナル ジオグラフィック、2008年3月号、116-138、日経ナショナル ジオグラフィック社。

  「天人合一(自然と人の融合)」の文化生態系がある -中国エコツアーの実践-

 JICA地球ひろば・環境展連続セミナーの第2回として「中国エコツーリズムの現状と課題等」が開催されました。当日は、中国国家林業局・管理幹部学院副院長の方杯龍さんの発表があり、次のことが強調されました。
 「中国の名山『中華五岳』の筆頭である泰山を、世界遺産に登録するために国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会に申請した際、当時の世界遺産の基準である『自然遺産』および『文化遺産』のどちらにも、泰山を含む自然と文化の融合という形に当てはまらず、そのご世界遺産委員会により規定が改正され、既存する2種類に加えて『自然および文化遺産』タイプが設けられました」(注)。
 中国におけるエコツアーの特徴は「天人合一(自然と人の融合)」であり、これは自然と人が不可分のものであることをさし、中国の「大自然」は、千年の時をこえる独特な伝統文化にそめられ、自然と文化は融合していて切りはなすことはできないことをしめしているそうです。
 したがって、中国のエコツアー景観区は、自然景観のみならず文化景観をふくんでおり、そこには「天人合一」の文化生態系があとのことです。
 この「天人合一」の思想は、ネパール・ヒマラヤにおけるエコツアーの実践においても非常に重要です。つまり、自然と人とを分断したものとしてとらえて、その時だけ外側から自然の中に入って行って、また出てくるといったツアーではなく、自然と人とが融合したひとつの世界(システム)をみずから体験してみるとうツアーを企画することに意味があるということになります。
 このような、自然と人が融合した世界(システム)のことを、私たちも「大自然」と呼ぶことにしたいとおもいます。

(注)方杯龍「中国における自然保護区でのエコツアー管理」

  ヒマラヤ植林には4つの効果がある


 解説
 ヒマラヤ保全協会は、2008年度会員総会での議論を踏まえ、キャンペーン「100円で1本の木が植えられます!」を開始することになりました。このキャンペーンをはじめるにあたって、ヒマラヤに植林をすることの効果を説明するために、以下の文章を作成しました。


syokurin_kouka.jpg はじめに
 ヒマラヤでは、いちじるしい人口増加とともに森林の減少がすすんでいます。それは、ヒマラヤで暮らす人々が、生活(薪や家畜飼料の採取など)のため森林を伐採しなければならないからです。森林が伐採された後には荒廃地がのこり、地域の環境破壊が深刻な問題になっています。
 森林を利用し、それを減少(後退)させたのは住民ですが、一方で、住民は森林に依存した生活をしているため、森林が後退することにより住民の生活はくるしくなります。そして住民は、森林伐採を奥地へとさらにすすめ、生活が一層くるしくなるという「悪循環」が生じてしまっています。
 そこで、私たちヒマラヤ保全協会は、森林を再生させるとともに、人々の生活を改善することを目的に植林事業を開始しました。

1.地球温暖化の対策として重要です
 今日、地球環境問題として地球温暖化がクローズアップされています。地球温暖化は、温室効果ガス(CO2)の増加によってひきおこされているとされ、その削減が世界的な課題になっています。CO2削減のためには、その排出量を減らすとともに、それを吸収する森林を増やすことが必要です。
 このような意味で、森林減少がいちじるしくすすんでいるヒマラヤにおいて植林活動をすることには大きな意味があり、ヒマラヤの森林は、ヒマラヤだけのものではなく世界へとつながっているのです。ヒマラヤ保全協会は、ヒマラヤ植林が世界でもみとめられるよう努力をつづけています。

2.自然環境を保全します
 地球温暖化対策以外にも、植林活動により様々な効果が生じます。
 たとえば、「森林は緑のダム」と言われるように、森林ができると樹木が土地に根をはり、地下水をはぐくみます。ヒマラヤは南アジアの水源として重要であり、森林は、その水資源を涵養するためになくてはならないものです。また、雨季の豪雨のとき、樹木の枝葉がクッションとなり雨滴が表土に直接あたらなくなるので、土壌流出をふせぐ効果も生じます。
 水資源の涵養、土壌保全のほかにも、動植物の保護による生物多様性の保全、景観の保護など自然環境を保全するための様々な効果が生み出されています。さらに、自然環境の保全は、エコツーリズムの実践といったあらたな価値も生み出しつつあります。

3.住民に森林資源を供給します
 ヒマラヤで暮らす人々は、森林の中に入り込んだ生活をしており、その暮らしは森林資源に高度に依存しています。自然保護だけを目的にするのであれば保護区(保護林)を増やせばよいのですが、それだけだと、ヒマラヤ山村の人々は生活していけなくなってしまいます。
 たとえば、ネパール全体で消費する全エネルギーの70%が薪であると言われています。家庭での調理用、暖房用の他、レンガ製造などの工業用熱源として薪は使用されています。また、山間部では放牧する草地が少ないため、樹木の葉を家畜飼料として人力であつめて家畜に食べさせています。つまり、彼らは、薪や家畜飼料を森林から絶えずあつめないと日々の生活が成り立たないという、森林に大きく依存したライフスタイルをもっています。
 さらに、森林に溜まる落ち葉はやせた畑の肥料としても活用され、豊かな森林は水をはぐくみ畑に農業用水を供給します。ヒマラヤには「耕して天に至る段々畑」があり、この段々畑を支える基盤が森林なのです。
 このように、ヒマラヤの植林活動は、薪・家畜飼料・材木・食品・薬草・堆肥・換金作物・水などの「森林資源」を住民に供給し、住民のもっとも重要な生活基盤をつくることになるのです。

4.住民の生活を改善します
 ヒマラヤの人々は、薪や堆肥、家畜飼料を採取するために長時間の重労働にたずさわることを余儀なくされ、特に女性の健康維持と社会参加、教育を受ける機会の減少など社会的な悪影響が出ています。
 植林により、薪やその他の森林資源を豊富に生み出す森林が集落の近くに再生されると、農業の改善ととともに、住民の社会生活も改善できます。ヒマラヤ保全協会は、住民の生活基盤となる森林を「生活林」と命名し、単に木を生産するだけではなく、地域住民の生活を積極的に改善する努力をつづけています。
 これにより、地域住民が植林活動に主体的に参加するようになってきています。この取り組みは、住民みずからがみずからの森をそだてるといった作業であり、住民が主体的に参加しながら、持続的継続的に自然環境を再生・保全していくプロセスです。
 「生活林」は、人手が入ってこそ健全に保たれる森林ですので、住民の主体的参加があってこそ永続的に森林を保全していくことができるのです。こうして、森林を利用しつつ育てるという仕組みができあがれば、森林と住民の循環的関係が構築され、自然と人間が共生していく道をひらいていくことができます。

▼下記サイトに写真入りで掲載しました。
http://www.ihc-japan.org/support/kouka.html

▼更新しました。
サポート 〜100円で1本の苗木が植えられます〜 - 目標:ヒマラヤ植樹 100万本-

  ネパール・ヒマラヤは森林減少地域である

 FAO「Countries with large net changes in forest area 2000−2005」によると、ネパールは、年間の森林の減少率が5パーセントを上回る地域(森林が減っている地域)に分類されています。
 一方、日本は、年間の森林増減率がマイナス5パーセント〜プラス5パーセントの間(森林の増減が少ない地域)に分類されています。つまり、日本は、これ以上植林をすすめる地域はありませんが、現在ある森林はよく管理・維持されているということです。
 FAOによると、2000〜2005年に減少した世界の森林は、年平均で約730haであり、これは、1分間につき東京ドーム3個分、1時間では179個分に相当する森林面積が減少していることになるそうです。
 日本国内にあらたに植林をする地域がなくなった以上、発展途上国における植林が重要です。ネパール・ヒマラヤも森林減少地域であり、当事国だけで植林・森林保全をすすめるのが困難な現状を踏まえ、今後、植林・森林保全の国際協力がますます重要になってきます。

  タトパニでゴミ処理プロジェクトがはじまる -IHCエコ・プロジェクト-

タトパニ ヒマラヤ保全協会の本年度の「エコ・プロジェクト」がはじまりました。今年は、温泉で有名なタトパニと、「IHC山岳エコロジースクール」開催地のナルチャンにおいて実施します。

 2008年7月6日には、環境専門家で当協会理事のWさんと、ヒマラヤ保全協会ネパール・スタッフのリル=プンさんがタトパニに行き、関係者と協議をしました。以下は、リルさんからの報告です。

 2008年7月6日、W理事と私はタトパニ村を訪れた。この訪問の主目的は、ゴミ処理プログラムを行うことについて村人と議論することであり、その結果多くのことがわかった。
 タトパニには3つの異なるTole(Toleとは世帯グループを指す)がある。我々はすべてのToleにおいて別々に話し合いをした。
 Atma Tulachan氏(ホテルヒマラヤのオーナー)が村人との話し合いの場を持つ手助けをしてくれた。村人たちはとても前向きでこのプログラムをよく理解していた。しかし、そのなかの3〜4人はプログラムに興味を持たなかった。彼らはピットを掘りゴミを集めることはしたくなかった。むしろカリガンダキ河岸にゴミを投棄したがった。彼らは、カリガンダキ河岸にゴミを投げすてることをまだこのんでしている。これはこの村にとって深刻な問題である。

 問題:
 ほとんどの者がこの計画が継続して行われていくのかどうかを危ぶんでいる。過去にもベルギーのボランティアによるゴミ処理プログラムが行われたことがある。問題意識の欠如からこのプログラムは村人たちには有効に働かなかった。不幸なことに、彼らはゴミの処理ができず、村を整然清潔に保つことができなかった。村はとても小さいのでピットを掘るための共有地をどうするかという問題がある。しかしこの村のゴミの量は沢山の他のどの村よりも多い。タトパニにすむ人々の60%が他の場所からビジネス目的で移り住んできた者達であり、それゆえ地域活動に彼らの参加を促すことは難しい。

 結論:
 我々の訪問中、多くの人たちは我々の計画をとてもよく理解してくれた。特に地域青年団の何人かやマザーグループはゴミ処理計画に興味を示してくれた。まだ問題はいくつか残ってはいるが、この村でプロジェクトが行うことができると希望をもっている。問題は、他の村人の意識の欠如の結果である。村人たちがこの計画を手伝ってくれることには疑念の余地はないが、作業や工事を実施する前に彼らにもよくわかってもらえるよう努める必要がある。


  ヒマラヤ保全協会の2008年度総会を開催する -キャンペーン「100円で1本の木が植えられます」-

 ヒマラヤ保全協会の2008年度総会を開催しました。のべ33名の方々にご参加いただき、充実した会にすることができました。
 本年は、会員総会プレイベントととして、講演会「ネパール 村人の暮らしと国際協力」(講師:清沢洋)、「サリジャ村の織物プロジェクト」(講師:遠藤昭一)を開催しました。
 会員総会では、本年3月に終了した「植林プロジェクト(キバン-ナンギ地域)」(12年間で約70万本の植樹、約1500ヘクタールの面積の森林を再生)など、現地事業の成果につきましてくわしく報告しました。また、キャンペーン「100円で1本の苗木を植えられます」をはじめることになりました。議案につきましては全会一致で承認されました。
 懇親会では、冒頭に、講談「お竹如来」(江戸時代のリサイクルの話)をたのしみました。

▼下記サイトに、総会によせられたコメント、質疑応答、感想などをアップロードしました。
http://www.ihc-japan.org/event/080705.html

  バラモン教やヒンドゥー教と仏教とのつながりを通して、インド・ネパールと日本のつながりをとらえる

 バラモン教やヒンドゥー教の神々が日本まで伝来して仏教にとりこまれた例は数多くあります。バラモン教やヒンドゥー教と仏教とのつながりを通して、インド・ネパールと日本のつながりをとらえることはとても意義深いことです。
 たとえば、千手観音は、ヒンドゥー教の女神ドゥルガーに由来するとかんがえられます。千本の手は、どのような衆生をももらさず救済します。
 虚空蔵菩薩は、バラモン教の天神ディアウスに由来するといいます。虚空のように無量無辺の功徳を蔵しています。
 地蔵菩薩は、バラモン教の地神プリディビーに由来します。地球のすべての生き物をそだてる大地のめぐみをあらわします。
 梵天は、バラモン教やヒンドゥー教での宇宙の創造神ブラフマーのことです。
 帝釈天は、ヒンドゥー教のインドラ神が仏教にとりいれられ、仏法守護の十二天のひとつになったものです。
 弁財天は、古代インドの河の神である女神サラスヴァティが仏教にとりこまれました。本来は「弁才天」と書きましたが、財宝の意味をくわえて弁財天と書くようになりました。もともと河の神だったので、池や水辺、島に祀られることが多いです。
 大黒天は、ヒンドゥー教のシバ神の変化身であり、戦闘神でもあり財福の神でもあります。
 このように、バラモン教やヒンドゥー教と仏教を通して、インド・ネパールと日本はつながっているのであり、大きな共通の文化圏を構成しています。この世界では文化的な共鳴がおこっているといってもいいでしょう。

  エコ・プロジェクト、2008年度の現地活動がはじまる -W理事、ポカラ到着-

 環境専門家でヒマラヤ保全協会理事のWさんがポカラに到着しました。今回のミッションは「エコ・プロジェクト」(ゴミ処理・観光ルート美化)であり、ネパール有数のトレッキングルートであるアンナプルナ山麓、特に、タトパニ(ネパール語で温泉という意味)およびその周辺でゴミ処理・環境問題にとりくみます。タトパニは、温泉があるため、非常に多数のトレッカーがおとずれ、当然、ゴミがたくさん排出されて環境問題がクローズアップされています。
 Wさんは、ヒマラヤ保全協会ネパール・スタッフのリル=プンさんとともに、7月5日にポカラを出発、10日間にわたり現地活動をして、7月15日にポカラにもどる予定です。

  エベレストの登頂など、もう一つの挑戦に比べれば取るに足らない -エドモンド=ヒラリー卿-

「エベレストの登頂など、もう一つの挑戦に比べれば取るに足らない。その挑戦とは、ネパールで暮らす、私のシェルパの友人たちの生活を改善し、ヒマラヤの文化と美しさを守ることだ」(エドモンド=ヒラリー卿)
 『極限に挑む』(ナショナル ジオグラフィック 冒険・探検写真集、日経ナショナルジオグラフィック社、2007年)には、地球を解き明かす“未踏の世界”への挑戦の記録が現地の写真とともに解説されています。これを見ていると、世界最高峰エベレストが、北極、南極につく第三の極限であり極地であることがよくわかります。世界の探検家たちは、命をかけて極限あるいは極地をめざしました。エベレストでは男女あわせて186人が亡くなっています。
 エドモンド=ヒラリー卿は、その後、シェルパ民族を支援するプロジェクトに力をそそぎ、教育や医療の充実に尽力しました。彼は、力と無私の精神・謙虚さをかねそなえた類いまれなる人格者として多くの人々に記憶されています。

  保護林と生活林の間に一線をひき、役割分担を明確にしていく

「ネパールにある森林の20パーセントは既に国立公園や保護区に指定されている。これらの森の生態系を保護することは重要だが、いたずらに村の森を保護区とすることは控えなければならない。(中略)森林利用グループが管理する森では、一定の環境基準を遵守しているかぎり、伐採を含め森林利用を制限すべきではい」(注)。森を守ることと、人々の生活を守り村の発展をかんがえることは不可分であると主張されています。
 自然保護だけを目的にするのであれば保護区(保護林)を増やせばよいのですが、それだけだと、ヒマラヤ山村の人々は生活していけなくなってしまいます。彼らは、森林に大きく依存したライフスタイルをもっているからです。
 ヒマラヤで森林保全事業をすすめていく場合、保護林と利用できる森、このジレンマはどこかで解決しなければなりません。
 そのためには、両者の間のどこかに一線をひき、役割分担を明確にしていく必要があるでしょう。保護林では、生物多様性の保全、原種の保護といったことが目的になりますが、村人が利用できる森では、木をそだて森をまもってこそ自分たちの生活が改善されていくといった、利用してこそ まもられるという仕組みをつくることが必要です。
 結局、総合的・長期的にこの課題をとらえて、森林がこれ以上破壊・後退することなく増えていくようにすることがもとめられます。未来にむかって問題を解決していくことこそ重要です。
 ヒマラヤ保全協会では、一定のルールのもとで村人が利用できる森のことを「生活林」と呼んでいます。

(注)久保英之著『アジアの森と村人の権利 -ネパール・タイ・フィリピンの森を守る活動-』現代書館、2003年。

  住民が主体的に参加する森林保全事業は、地球温暖化の緩和策としても重要である

 地球温暖化を緩和するための緩和策として、森林によるCO2(温室効果ガス)吸収が重要であることは、現在ではひろく知られています。樹木は、数十年から数百年にわたってCO2を吸収し、炭素を体内にたくわえつづけます。
 IPCC第4次評価報告書では、森林・木材による温暖化緩和策として、「1. 森林面積の維持・増加、2. 個別森林レベルでの森林蓄積の維持・増加、3. 景観レベルでの森林蓄積の維持・増加、4. 木材製品の活用」をあげています。ここで注目すべきことは、CO2を吸収させるために森林面積を増加させるだけでなく、同時に、森林によるCO2吸収・蓄積を減少・劣化させないように、森林を健全に維持・管理することが強調されているということです(注)。
 つまり、森林は再生させるだけでなく、できあがった森林をいかにうまく まもっていくかということが重要だということです。
 このような観点からいっても、ヒマラヤ保全協会が長年おこなってきている、住民の主体的参加による植林・森林保全事業には大きな意義があります。つまり、私たちの仕事には、植林をして森林を増やすだけでなく、一度できた森林が、地元の住民みずからの手でまもられていく仕組みができあがっているからです。これは、苗木をそだて荒廃地に植える初期段階から、住民が主体的に事業に参加するようにしているからできるのであり、これによって持続的・永続的な森林保全が可能になるのです。これが私たちが主張する「住民主体の森林保全・環境保全」の実践形態にほかなりません。
 このように、ヒマラヤ保全協会の植林・森林保全事業は、地球温暖化緩和策としても大きな意味をもつようになってきています。

(注)松本光郎「森林による二酸化炭素の吸収」科学, 78(特集 温暖化への対応 日本のテクノサイエンス), 536-539, 岩波書店。

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