ネパール・ヒマラヤ・国際協力

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ヒマラヤ保全協会事務局長

管理人  [ ヒマラヤ保全協会事務局長 ]

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  ネパールに長期滞在する場合には予防接種をした方がよい

 ネパールでかかりやすい病気・怪我としては、感染症胃腸炎(下痢症)、発熱、ウィルス性肝炎、狂犬病、マラリア、日本脳炎、高山病がある。日本からネパールへの入国に際して義務づけられている予防接種はないが、健康管理の点からは、A型肝炎・B型肝炎・腸チフス・破傷風・日本脳炎・狂犬病の予防接種がすすめられている(注)。
 短期旅行の場合は予防接種をすることはすくないが、長期滞在の場合は予防接種をしておいた方がよい。
 なお、旅行にともなう健康や医学に関しては下記サイトにくわしい解説がでている。
> 旅と健康(日本旅行業協会)
> 旅行医学・感染症(名古屋検疫所)
 
(注)在外公館医務官情報ネパール

  円安、ネパールルピー高がつづいている

 円安、ネパールルピー高がつづいている。Nepal Rastra Bank(ネパール国立銀行)のウェブサイトによると、現在、10円=5.31ネパールルピーである。1年前は、10円=6.39ネパールルピーであった。Nepal Rastra Bank(ネパール国立銀行)のサイトでは過去にさかのぼってレートがしらべられるようになっている。
 これは、インド経済が好調のためインドルピーが高騰しているためであるらしい。ネパールルピーとインドルピーは為替レートが固定されており、1インドルピー=1.6ネパールルピーである。したがって、インドルピーの変動にしたがってネパールルピーも変動することになる。
 ネパールルピー交換レートは以下のサイトでもしらべられる。
> OANDA.com
> XE.com
> Yahoo!FINANCE
 現地での両替額に一番ちかいのはOANDA.comの値であるが、実際にはこれよりも悪くなる。Yahoo!FINANCEの値は現実とはかなりちがう。


  外来種を導入する一方で、その地域固有の生態系をまもっていかなければならない

「他の地域から持ち込まれた生物は『外来生物』(Alien species)などと呼ばれるようになり、生態系を脅かす原因の一つとして国際的にも重要な課題となった」。1993年に発効された生物多様性条約では、「生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること」とされている(注)。
 外来種の問題は世界各地でとりあげられており、ネパールやヒマラヤにおいても例外ではない。社会的・経済的要因により外来種を導入することは多いが、一方で、その地域固有の生態系をまもっていくことも必要である。それらの間のどこに一線をひくかが大きな問題である。
 発展途上国の場合は、生態系保全よりも社会的・経済的要因を優先せざるを得ないことが多いが、生態系保全のための国際協力ももっとすすめていかなければならない。

(注)小林光(2007)「帰化植物とは」学士会会報2007-II(No.863)。

  本当の自分とは、他者とのかかわりの中にある -ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさん講演会-

 ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんの講演会「ローカリゼーションの胎動:経済グローバル化を越える地元力」(2007年7月5日)、「懐かしい未来とスピリチュアリティ:本当の学びと幸福とは」(2007年7月10日)が開催された(注1)。ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんは、『ラダック 懐かしい未来』(注2)の著者として知られている、スウェーデン生まれの言語学者・活動家であり、同著は30カ国以上に翻訳されている。
 経済グローバル化が急激にすすむ今日、地球も人心も荒廃し、世界は混迷をふかめようとしている。しかし、風土に根差した循環型の地域コミュニティをよみがえらせ、荒廃をくいとめる活動は世界各地ですでにはじまっている。その鍵は、「ローカリゼーション」つまり地域の力、地元の力をたかめることにあり、そこにもう一つの「未来」があるとヘレナさんは言う。ローカリゼーションを実践するためには、なるべく近くに住んでいる人々とネットワークをつくるようにとのことである。いつでも会えるということが非常に重要である。そして、そのようなネットワークのなかで他者と自分とのかかわりを具体的につくりあげていく。
 ローカリゼーションは、ただ単に地域を活性化させるだけの運動ではない。その実践のなかで自分自身のあり方や生き方もかんがえていかなければならない。ヘレナさんの話は、自分とは何なのか、人間とは何なのかといったところまで発展していく。その結論は「本当の自分とは、他者とのかかわりの中にある」ということである。
 これは、西洋型科学技術文明では決して解決でない、また、支援とか協力とかいう行為をはるかにこえる きわめて大きな問題である。

(注1)主催:ヘレナさんイベント実行委員会(NPO法人開発と未来工房&ジュレー・ラダック)
(注2)ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ著『ラダック 懐かしい未来』(『懐かしい未来』翻訳委員会訳、山と渓谷社、2003年
(注3)チベット仏教と伝統医療が生活の中にしっかりと息づいている、ヒマラヤの辺境ラダック(インドのジャンムー・カシミール州)では、近代化とグローバリゼーションの波の中で、伝統的な暮らしが変容を迫れている。しかし、良き伝統を未来へとつなげる多様な取り組みが、地域の人々によってはじめられているという。

  マラリヤがふたたび勢力を盛りかえしてきた

「一度はほぼ絶滅されたスリランカやインドでも、マラリヤは再び勢力を盛り返した」(注)。マラリア原虫をはこぶハマダラ蚊の駆除のために各地で使用されていたDDTがつかえなくなったからだ。DDTのつかいすぎは、土壌への蓄積や、川や海の汚染をひきおこしたという。
 マラリア原虫は、とがった鉛筆の先ほどの水滴に5万個が入るくらい小さな単細胞の微生物であり、蚊が1回血をすうごとに、通常は数十個が体内に入る。だが人間一人の命を奪うには、理論上はわずか1個のマラリア原虫がいれば事足りるそうである。
 年に5億人が感染し、100万人が命をおとしているおそろしい病に人類はいま、全力で立ち向かおうとしている。 

(注)地球の悲鳴「世界で大流行マラリアの迫りくる脅威」ナショナルジオグラフィック日本版2007年7月号、日経ナショナルジオグラフィック社。

  地球温暖化の時代、モンスーンアジアから新しい適応戦略・技術革新をつくりだしていく

 国際日本文化センター副所長の安田喜憲氏は、「地球温暖化の時にいち早く大きな影響を受けるのは、我々モンスーンアジアに住んでいる人間だ」(注)という。
 安田氏の研究によると、ヨーロッパやシベリアでは1万4500年前にならないと気温の上昇がおこらなかったが、モンスーンアジアではすでに1万5000 年前に温暖化がはじまっていた。しかし同時に、そこで人類は新しい時代の適応戦略を世界に先駆けてはじめていたという。したがって、21世紀の温暖化でも、このモンスーンアジアから新しい適応戦略・技術革新をつくりだしていくべきだと主張している。そして、この地球温暖化の時代を生き抜くには、我々の稲作漁労文明の伝統が必要だとのべている。モンスーンアジアの最大の特色は降水量が多いということである。
 我々人類は、2020年にゆたかさの限界点をむかえ、食料・水・エネルギーが急激に減少し、2050年には熱帯雨林がゼロになり、人口が100億人ちかくになると予測されている。人口80億人が豊かさを維持できる限界であるから、このままいくと2050年に突然のカタストロフィーが起こる可能性がある。それを回避するためには、我々の稲作漁労文明に立脚した新しい産業技術社会を構築しなければならないと提言されている。

(注)安田喜憲「21世紀の環境・経済、そして文明」"BEYOND THE BORDER"64-67ページ。日本経団連自然保護基金・日本経団連自然保護協議会15周年記念号編集委員会編、公益信託日本経団連自然保護基金発行、2007年。

  ヒマラヤの全体像とエッセンスを表現した -五百澤智也山岳図集-

 五百澤智也氏が『山と氷河の図譜 -五百澤智也山岳図集-』を発刊した(注)。この本の構成は次のようになっている。

I ヒマラヤの山と氷河
II アルプスの山と氷河
III 日本の山々
IV 日高山脈・日本アルプスの氷河地形分布図
V 日本地貌図

 これらのうち、「I ヒマラヤの山と氷河」は本書の半分近くの分量をしめ圧巻である。「エヴェレスト周辺鳥瞰図」からはじまり、「ヒマラヤ全山鳥瞰図」、「ヒマラヤ全山投影図」、「ヒマラヤ自然と暮らしの断面図」とつづいていく。
 鳥瞰図とはただの全体図ではなく、重要なところを強調して、ヒマラヤのエッセンスをわかりやすく圧縮して表現した図である。ただ全体をつかむだけでなく、エッセンスを理解することが重要である。
 「ヒマラヤの断面図」では、地質・地形・農業・民族が、低地から高地へむけてうつりかわっていく様子が見事にえがきだされている。「ヒマラヤ山脈全体の地形と河系」では、チベット高原(標高5000m)とヒンドゥスタン平原(標高300m以下)の間に「ついたて」のようにそぎびえるヒマラヤ山脈と、この地域の降水すべてをヒマラヤがあつめ、ヒンドゥスタン平原にながしている様子を直観的に理解できる。
 私たちヒマラヤ保全協会の事業地がある「アンナプルナ・ダウラギリ鳥瞰図」も見事である。私たちは、とかく、目前の仕事におわれて全体像を見失いがちである。したがって、短時間で直観的に全体像とエッセンスをつかめる五百澤氏の鳥瞰図は大変有益である。このような鳥瞰図をつかって、全体を見て部分(現場)に入るという実践形態をつくりあげるのがよい。

(注)五百澤智也著『山と氷河の図譜 -五百澤智也山岳図集-』ナカニシヤ出版、2007年。

  インド大陸上の地層がレッサーヒマラヤになり、インド大陸縁辺〜海洋底の堆積物がテーチスヒマラヤになった

 平朝彦著『地質学』(注)には、ヒマラヤ山脈の地史について簡潔にまとめられている。その要点は以下の通りである。

■先カンブリア時代〜中生代:インド大陸の上を、低変成の堆積岩を主体とする地層が被覆していた(→現在のレッサーヒマラヤ)。

■トリアス紀〜古第三紀:インド大陸の北側縁辺から海洋底にかけて(リフト大陸縁辺に)砕屑岩や炭酸塩岩が堆積・形成される(テーチス堆積物)。

■中生代:チベット高原の南には、付加体および火山弧を構成する火山岩や花崗岩が分布し、北方へのプレート沈み込み帯(アンデスタイプの大陸弧からなる沈み込み境界)が存在する。

■4500万年前:インドが衝突する
 第三紀:インド大陸がユーラシア大陸へ衝突する。これがヒマラヤ造山運動のはじまりである。インド大陸側に発達していたリフト大陸縁辺の堆積体(テーチス堆積物)は衝突にまきこまれる(→現在のテーチスヒマラヤ)。
 南側のインド地殻およびその大陸縁辺期限の岩石と、北側のチベット岩石との境界には、構造線「インダス-ツアンポ縫合線(Indus-Zampo Suture Zone)」が形成される。

■第三紀〜現在:前縁盆地の堆積物は衝上断層にまきこまれて低い山地「サブヒマラヤ」をつくる。サブヒマラヤには厚い堆積層であるシワリク層群が露出する。
 サブヒマラヤの北側には、「レッサーヒマラヤ」とよばれる1500〜3000m急の山々が形成される。
 レッサーヒマラヤの北側には「グレーターヒマラヤ」が形成される。グレーターヒマラヤの下部は高度変成岩である。
 その上に「テーチス堆積物」(テーチスヒマラヤ)が衝上する。
 チベット側の岩石(白亜紀の付加体やオフィオライト)は、ナッペとしてテーチスヒマラヤの上に衝上する。
 グレーターヒマラヤとテーチスヒマラヤの境界に低角度の正断層が生じる。ヒマラヤでは、山脈の上昇とそれにともなう引張テクトニクスの活動が同時におこる。
 インドの衝突は、アジアの変形をひきおこす。

 中新世:下部地殻の溶融により、グレーターヒマラヤに花崗岩が貫入する。
 2500万年前:山脈が隆起する
 800万年前:チベット高原が隆起する
 現在:ヒマラヤ山脈は、250〜300kmの幅をもち、3000kmの延長をもつ。0.5〜4mm/年で隆起していおり、はげしい侵食にさらされ、堆積物は、前縁盆地だけでなく、インド洋の海底にも巨大扇状地をつくっている。(050525)

(注)出典:
平朝彦著『地質学1 地球のダイナミックス』岩波書店、2001年
平朝彦著『地質学2 地層の解読』岩波書店、2004年

  ヒマラヤ山脈隆起後、テチス堆積物は、高ヒマラヤ変成岩の上位において北方へ重力滑動し横臥褶曲を形成した

 九州大学の酒井治孝教授はヒマラヤ山脈の地史についてくわしく研究されている。地質学雑誌103巻3号には、ヒマラヤ山脈の変動についてのくわしい解説がある(注)。その要点は以下の通りである。

 先カンブリア紀後期のインド亜大陸の非活動的大陸縁辺に堆積した一連の浅海堆積物は、インド亜大陸とアジア大陸との衝突、それにひきつづく、インドプレートの沈み込みにより、その下部は広域変成作用をこうむり、現在みられる高ヒマラヤ変成岩類とその上位のテチス堆積物が形成された。
 高ヒマラヤ変成岩は、MCTとSTDSにはさまれた厚さ5〜10kmの薄い板であり、変成度がほとんど変わらないので、ほぼ水平に近い緩い角度で沈み込んだことが示唆される。沈み込みの後、高ヒマラヤ変成岩類は、レッサーヒマラヤ堆積物に熱いままで急激に衝上たことにより、変成岩は下降変成作用をこうむり、その直下のレッサーヒマラヤ堆積物は低度の上昇(プログレード)変成作用をうけた。
 テチス堆積物は、高ヒマラヤ変成岩の上位において、レッサーヒマラヤ南部を起点として、STDSにそって北方へ重力滑動し、いちじるしい横臥褶曲を形成した。このデタッチメント断層形成の原因としては、(1)MCTにそって、テチス堆積物をのせた高ヒマラヤ変成岩類が衝上し、自重による垂直応力が大きくなった、(2)高ヒマラヤ変成岩が部分融解し、破壊強度が低下し延性変形をおこしたことがかんがえられる。
 MCTにそう衝上運動とそれにともなう下降変成作用、および、STDSにそう重力滑動は、約20Ma頃ほぼ同時におこり、その後、上部の地層の削剥と、それにともなうさらなる下降変成作用がおこった。上位のテチス堆積物が滑動し、削剥されたので、高いSr同位対比をもつ下位の高ヒマラヤ変成岩類・花崗岩類が風化・浸食され、河川を通して海洋内のSr同位対比が急激に増大した。(990726)

(注)出典:酒井治孝(1997)「エベレスト直下のデタッチメント断層とそのヒマラヤ造山運動におけるテクトニックな意義」地質学雑誌,103巻,3号,240-252.

  モンスーンの強弱は、ヒマラヤ山脈の隆起と地球がうける太陽輻射量の変化により変動する

 『地球と文明の周期』(講座 文明と環境 第1巻、朝倉書店)には、モンスーンとヒマラヤ山脈の隆起に関して解説されている(注3)。その要点は以下の通りである。

 地球の自転軸は公転面に対して23.44度かたむいている。この自転軸の傾斜方向はみそすり運動のように変動しており、この変動は、約2万年の周期をもち「歳差」とよばれている。
 冬の寒さと夏の暑さの程度の変動は、公転軌道の離心率と自転軸の傾斜に関係しており、「気候歳差」とよばれている。惑星の引力により、地球の公転軌道の離心率は0.001〜0.059、自転軸に対する公転軌道の傾斜は22.1〜24.5度の範囲で変動している。太陽からの輻射量(太陽定数)が不変であれば、これらの起動要素の変動から地球がうける太陽輻射量の変動を計算することができ、その変動と氷期-間氷期の周期性を定量的に対応させることができる(注1)。
 一方、ベンガル海底扇状地における国際深海掘削計画(ODP: Ocean Drilling Program)によるヒマラヤ山脈由来の鉱物の研究から、1500万年前に、チベット・ヒマラヤが隆起を開始し、1090万年前から750万年前の間に急激に隆起し、90万年前からふたたび急激な隆起がおこったことがあきらかになった。
 また、オマーン沖においておこなわれた国際深海掘削計画によってえられた、海底堆積物の酸素/炭素同位体比および浮遊性微化石の研究(注2)から、70万年前以前は、「モンスーン」が継続的に強かったが、それ以後は、氷期のときには「モンスーン」が弱まっていたことがあきらかになった。
 氷期は太陽輻射減衰期に対応すると推測されるので、70万年前からは、太陽輻射減衰期にはモンスーンが減衰するようになったとかんがえられる。
 地球上で、地球大気をもっとも加熱している地域は、チベットから東南アジアにかけてのモンスーン地域である。夏季におけるチベット高原の日射による顕熱加熱にくわえ、そこにふきこむ太平洋とインド洋からの水蒸気に富む大気が、凝結の際に凝結熱を放出する潜熱加熱もおこる。モンスーンの発生と変動は、地球がうける太陽輻射量とヒマラヤ山脈の隆起に関連しており、その研究は、地球の気候変動を知るために重要である。(050708)

(注1)このような方法によって、北半球高緯度における太陽輻射量の変動と、氷期-間氷期の周期性を定量的に対応させたのがミランコビッチであり、この周期性は時間軸として利用することができるので、これを「ミランコビッチ時計」とよぶ。
(注2)浮遊性有孔虫酸素同位対比は、70万年前から鋸歯状の規則的な変動がみられ、振幅増大する。モンスーン強度の増大によって上昇流が増大すると、底生有孔虫の生息している底層水と浮遊性有孔虫の生息している表層水との混合がおこり、炭素同位対比の差が減少する。インド洋からチベットにふきこむ「夏季モンスーン」は、インド洋西部において上昇流を発達させ、この上昇流の変動からモンスーンの強弱を知ることができる。

(注3)出典:新妻信明「ミランコビッチ時計」、『地球と文明の周期』(講座 文明と環境 第1巻)53-59ページ、朝倉書店、1995年

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