エベレストの登頂など、もう一つの挑戦に比べれば取るに足らない -エドモンド=ヒラリー卿-
「エベレストの登頂など、もう一つの挑戦に比べれば取るに足らない。その挑戦とは、ネパールで暮らす、私のシェルパの友人たちの生活を改善し、ヒマラヤの文化と美しさを守ることだ」(エドモンド=ヒラリー卿)
『極限に挑む』(ナショナル ジオグラフィック 冒険・探検写真集、日経ナショナルジオグラフィック社、2007年)には、地球を解き明かす“未踏の世界”への挑戦の記録が現地の写真とともに解説されています。これを見ていると、世界最高峰エベレストが、北極、南極につく第三の極限であり極地であることがよくわかります。世界の探検家たちは、命をかけて極限あるいは極地をめざしました。エベレストでは男女あわせて186人が亡くなっています。
エドモンド=ヒラリー卿は、その後、シェルパ民族を支援するプロジェクトに力をそそき、教育や医療の充実に尽力しました。彼は、力と無私の精神・謙虚さをかねそなえた類いまれなる人格者として多くの人々に記憶されています。
『極限に挑む』(ナショナル ジオグラフィック 冒険・探検写真集、日経ナショナルジオグラフィック社、2007年)には、地球を解き明かす“未踏の世界”への挑戦の記録が現地の写真とともに解説されています。これを見ていると、世界最高峰エベレストが、北極、南極につく第三の極限であり極地であることがよくわかります。世界の探検家たちは、命をかけて極限あるいは極地をめざしました。エベレストでは男女あわせて186人が亡くなっています。
エドモンド=ヒラリー卿は、その後、シェルパ民族を支援するプロジェクトに力をそそき、教育や医療の充実に尽力しました。彼は、力と無私の精神・謙虚さをかねそなえた類いまれなる人格者として多くの人々に記憶されています。
保護林と生活林の間に一線をひき、役割分担を明確にしていく
「ネパールにある森林の20パーセントは既に国立公園や保護区に指定されている。これらの森の生態系を保護することは重要だが、いたずらに村の森を保護区とすることは控えなければならない。(中略)森林利用グループが管理する森では、一定の環境基準を遵守しているかぎり、伐採を含め森林利用を制限すべきではい」(注)。森を守ることと、人々の生活を守り村の発展をかんがえることは不可分であると主張されています。
自然保護だけを目的にするのであれば保護区(保護林)を増やせばよいのですが、それだけだと、ヒマラヤ山村の人々は生活していけなくなってしまいます。彼らは、森林に大きく依存したライフスタイルをもっているからです。
ヒマラヤで森林保全事業をすすめていく場合、保護林と利用できる森、このジレンマはどこかで解決しなければなりません。
そのためには、両者の間のどこかに一線をひき、役割分担を明確にしていく必要があるでしょう。保護林では、生物多様性の保全、原種の保護といったことが目的になりますが、村人が利用できる森では、木をそだて森をまもってこそ自分たちの生活が改善されていくといった、利用してこそ まもられるという仕組みをつくることが必要です。
結局、総合的・長期的にこの課題をとらえて、森林がこれ以上破壊・後退することなく増えていくようにすることがもとめられます。未来にむかって問題を解決していくことこそ重要です。
ヒマラヤ保全協会では、一定のルールのもとで村人が利用できる森のことを「生活林」と呼んでいます。
(注)久保英之著『アジアの森と村人の権利 -ネパール・タイ・フィリピンの森を守る活動-』現代書館、2003年。
自然保護だけを目的にするのであれば保護区(保護林)を増やせばよいのですが、それだけだと、ヒマラヤ山村の人々は生活していけなくなってしまいます。彼らは、森林に大きく依存したライフスタイルをもっているからです。
ヒマラヤで森林保全事業をすすめていく場合、保護林と利用できる森、このジレンマはどこかで解決しなければなりません。
そのためには、両者の間のどこかに一線をひき、役割分担を明確にしていく必要があるでしょう。保護林では、生物多様性の保全、原種の保護といったことが目的になりますが、村人が利用できる森では、木をそだて森をまもってこそ自分たちの生活が改善されていくといった、利用してこそ まもられるという仕組みをつくることが必要です。
結局、総合的・長期的にこの課題をとらえて、森林がこれ以上破壊・後退することなく増えていくようにすることがもとめられます。未来にむかって問題を解決していくことこそ重要です。
ヒマラヤ保全協会では、一定のルールのもとで村人が利用できる森のことを「生活林」と呼んでいます。
(注)久保英之著『アジアの森と村人の権利 -ネパール・タイ・フィリピンの森を守る活動-』現代書館、2003年。
住民が主体的に参加する森林保全事業は、地球温暖化の緩和策としても重要である
地球温暖化を緩和するための緩和策として、森林によるCO2(温室効果ガス)吸収が重要であることは、現在ではひろく知られています。樹木は、数十年から数百年にわたってCO2を吸収し、炭素を体内にたくわえつづけます。
IPCC第4次評価報告書では、森林・木材による温暖化緩和策として、「1. 森林面積の維持・増加、2. 個別森林レベルでの森林蓄積の維持・増加、3. 景観レベルでの森林蓄積の維持・増加、4. 木材製品の活用」をあげています。ここで注目すべきことは、CO2を吸収させるために森林面積を増加させるだけでなく、同時に、森林によるCO2吸収・蓄積を減少・劣化させないように、森林を健全に維持・管理することが強調されているということです(注)。
つまり、森林は再生させるだけでなく、できあがった森林をいかにうまく まもっていくかということが重要だということです。
このような観点からいっても、ヒマラヤ保全協会が長年おこなってきている、住民の主体的参加による植林・森林保全事業には大きな意義があります。つまり、私たちの仕事には、植林をして森林を増やすだけでなく、一度できた森林が、地元の住民みずからの手でまもられていく仕組みができあがっているからです。これは、苗木をそだて荒廃地に植える初期段階から、住民が主体的に事業に参加するようにしているからできるのであり、これによって持続的・永続的な森林保全が可能になるのです。これが私たちが主張する「住民主体の森林保全・環境保全」の実践形態にほかなりません。
このように、ヒマラヤ保全協会の植林・森林保全事業は、地球温暖化緩和策としても大きな意味をもつようになってきています。
(注)松本光郎「森林による二酸化炭素の吸収」科学, 78(特集 温暖化への対応 日本のテクノサイエンス), 536-539, 岩波書店。
IPCC第4次評価報告書では、森林・木材による温暖化緩和策として、「1. 森林面積の維持・増加、2. 個別森林レベルでの森林蓄積の維持・増加、3. 景観レベルでの森林蓄積の維持・増加、4. 木材製品の活用」をあげています。ここで注目すべきことは、CO2を吸収させるために森林面積を増加させるだけでなく、同時に、森林によるCO2吸収・蓄積を減少・劣化させないように、森林を健全に維持・管理することが強調されているということです(注)。
つまり、森林は再生させるだけでなく、できあがった森林をいかにうまく まもっていくかということが重要だということです。
このような観点からいっても、ヒマラヤ保全協会が長年おこなってきている、住民の主体的参加による植林・森林保全事業には大きな意義があります。つまり、私たちの仕事には、植林をして森林を増やすだけでなく、一度できた森林が、地元の住民みずからの手でまもられていく仕組みができあがっているからです。これは、苗木をそだて荒廃地に植える初期段階から、住民が主体的に事業に参加するようにしているからできるのであり、これによって持続的・永続的な森林保全が可能になるのです。これが私たちが主張する「住民主体の森林保全・環境保全」の実践形態にほかなりません。
このように、ヒマラヤ保全協会の植林・森林保全事業は、地球温暖化緩和策としても大きな意味をもつようになってきています。
(注)松本光郎「森林による二酸化炭素の吸収」科学, 78(特集 温暖化への対応 日本のテクノサイエンス), 536-539, 岩波書店。
海外就労者が増えつづける -ネパール-
「海外就労者からの送金額は、2005/06年度の7ヶ月間だけで534.6億ルピーに上り、対前年比48.2%の増加となった」(注)。海外就労者からの送金は、いまや貿易赤字(2005/06年の8ヵ月間で741.7億ルピーの入超)を補填するうえで無視できない比重を占めるといいます。
海外就労(インドをのぞく)は一貫して増えづづけ、2004/05年度末までに正規の許可を得て海外で就労している人数は59万1400人にのぼり、2005/06年度の8ヵ月間だけでも12万3279人が就労目的で出国しています。
ネパールの海外就労者は今後とも増えつづけるのではないでしょうか。
(注)水野正己著「2006年のネパール 第2次民主化運動と国王政治の終焉」アジア動向年報2007、514-530ページ、アジア経済研究所
海外就労(インドをのぞく)は一貫して増えづづけ、2004/05年度末までに正規の許可を得て海外で就労している人数は59万1400人にのぼり、2005/06年度の8ヵ月間だけでも12万3279人が就労目的で出国しています。
ネパールの海外就労者は今後とも増えつづけるのではないでしょうか。
(注)水野正己著「2006年のネパール 第2次民主化運動と国王政治の終焉」アジア動向年報2007、514-530ページ、アジア経済研究所
平均732万ha(北海道とほぼ同じ面積)の森林が毎年失われている -FAO森林マップ-
「世界の森林面積は、1990年から2005年の間に約3%減少しています。2000年から2005年の間にも平均732万ha(北海道とほぼ同じ面積)の森林が毎年失われています」(注)。
現在、世界には約40億haの森林があり、陸地の約30%を占めています。FAOの森林マップによると、ネパールは、国土に占める森林面積の割合は、25-35%に分類されています。ちなみに日本は50-100%であり、世界有数の森林国家になっています。
したがって、今後は、日本国内よりも海外の森林減少地域において植林活動をすすめていくことが必要です。
(注)「FAOの森林マップ 世界の森林面積 2005年」世界の農林水産 FAO News 2008年 SUMMER(811号)、平成20年。
現在、世界には約40億haの森林があり、陸地の約30%を占めています。FAOの森林マップによると、ネパールは、国土に占める森林面積の割合は、25-35%に分類されています。ちなみに日本は50-100%であり、世界有数の森林国家になっています。
したがって、今後は、日本国内よりも海外の森林減少地域において植林活動をすすめていくことが必要です。
(注)「FAOの森林マップ 世界の森林面積 2005年」世界の農林水産 FAO News 2008年 SUMMER(811号)、平成20年。
ユキヒョウは、100年間で激減した
ユキヒョウの「生息地はヒマラヤ山脈やチベット高原、パミール高原、天山山脈なそ、世界でも指折りの峻険な高山地帯ばかりだ」(ナショナル ジオグラフィック日本語版、2008年6月号)。
ユキヒョウは、美しい毛皮をねらわれておびただしい数がころされ、現在の生息数は推計4000〜7000頭ほど、実際には3500頭にも満たないと懸念する専門家もいて、100年前の半数以下に落ち込んだといいます。
1975年以降は、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)に基づいて保護活動がすすめられていますが、密猟は後をたちません。
(注)日本にいるユキヒョウは30頭近く、東京都多摩動物公園では、現在、日本最多の10頭を飼育しているそうです。
ユキヒョウは、美しい毛皮をねらわれておびただしい数がころされ、現在の生息数は推計4000〜7000頭ほど、実際には3500頭にも満たないと懸念する専門家もいて、100年前の半数以下に落ち込んだといいます。
1975年以降は、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)に基づいて保護活動がすすめられていますが、密猟は後をたちません。
(注)日本にいるユキヒョウは30頭近く、東京都多摩動物公園では、現在、日本最多の10頭を飼育しているそうです。
中国雲南省チョンティエン県はシャングリラ県に改名された
「この地域は、2001年までチョンティエン県と呼ばれていた」(ナショナル ジオグラフィック日本語版 2008年5月号)。
2001年、中国雲南省チョンティエン県は、「シャングリラ県」と改名されました。その中心には、チベット仏教のソンザンリン寺がそびえています。
改名の効果がでたのか、雲南省の観光収入は毎年数千億円にのぼるそうです。
(注)シャングリラとは桃源郷(理想郷)のことです。そもそもは、イギリスの作家ジェームズ=ヒルトンが1933年に出版した小説『失われた地平線』の中に出てきた理想郷(ユートピア)の名称であり、小説の設定ではヒマラヤ山脈近辺にあるとされました。ヒマラヤ保全協会の会報の名称はここからきています。
2001年、中国雲南省チョンティエン県は、「シャングリラ県」と改名されました。その中心には、チベット仏教のソンザンリン寺がそびえています。
改名の効果がでたのか、雲南省の観光収入は毎年数千億円にのぼるそうです。
(注)シャングリラとは桃源郷(理想郷)のことです。そもそもは、イギリスの作家ジェームズ=ヒルトンが1933年に出版した小説『失われた地平線』の中に出てきた理想郷(ユートピア)の名称であり、小説の設定ではヒマラヤ山脈近辺にあるとされました。ヒマラヤ保全協会の会報の名称はここからきています。
標高の高低による人々の表情のちがいを見事にとらえる -ヒマラヤ写真教室-
ヒマラヤ写真教室「ランタンの山村、タマン族の暮らしと子供たち」(第25回ネパールサロン)が開催されました。講師は、ヒマラヤ保全協会会員で写真家の近藤さんでした。
今回の写真教室では、厳しい環境の中でたくましく生きる村人、子供たちの純心な姿のスライドショーを見ながら、基本的な撮影テクニックを学びました。また、パソコンを使ってコラージュ(切抜き)写真表現を学びました。
見せていただいた写真はどれもすばらしく、さすがプロの写真でした。
中でも印象的だったのは、逆光でのポートレートです。逆光をつかった写真が、周囲の雰囲気とともにいきいきと人物の表情をつたえています。露出を顔にあわせることがポイントになるそうです。
また、フラッシュの使い方もおそわりました。フラッシュをつかうと部屋全体がはっきりうつりますが、つかわないと背景をぼかすことができます。暗いからつかうというだけでなく、何をうつしたいかによってフラッシュをつかいわけると効果があがります。
たくさんの写真を見ていて気がついたことは、おなじタマン族でも、標高によってあきらかに表情がちがうということです。標高つまり気候(自然環境)によって人々の表情に傾向があり、それが見事にとらえられています。
「表情がかたいですね。標高は何メートルくらいですか」
「2000メートルをこえています」
「さむいところで暮らす人々ですね」
標高が高くきびしい気候(環境)で暮らしている人々の表情は、あたたかい所で暮らしている人々とちがってかなりひきしまった表情をしています。高度差がもたらす多様な環境とそれに適応して暮らす様々な民族が見てとれました。多様な環境と様々な民族こそ、ネパールやヒマラヤの最大の魅力でありおもしろさであることを再認識しました。
このような写真が撮れるのは、近藤さんがプロの写真家であることもありますが、それだけでなく、同じ地域に何回も入って、ヒマラヤの斜面をたえず上下しながらみずからの体験をふかめ、理解をふかめ、表面的にはとらえられないその地域の本質をさぐっているからでしょう。近藤さんとタマンの人々のとりくみは、「フィールド」をしっかり決めて、泥臭く、ふかくくいこむやりかたです。
様々な情報が比較的簡単に手に入る時代になって、ひろくあさく何でも見てやろうと次々に場所をかえていく探検的な行き方は重要視されなくなり、今回のようなローカルにふかくくいこむやり方がおもしろい時代になってきました。
今回の写真教室では、厳しい環境の中でたくましく生きる村人、子供たちの純心な姿のスライドショーを見ながら、基本的な撮影テクニックを学びました。また、パソコンを使ってコラージュ(切抜き)写真表現を学びました。
見せていただいた写真はどれもすばらしく、さすがプロの写真でした。
中でも印象的だったのは、逆光でのポートレートです。逆光をつかった写真が、周囲の雰囲気とともにいきいきと人物の表情をつたえています。露出を顔にあわせることがポイントになるそうです。
また、フラッシュの使い方もおそわりました。フラッシュをつかうと部屋全体がはっきりうつりますが、つかわないと背景をぼかすことができます。暗いからつかうというだけでなく、何をうつしたいかによってフラッシュをつかいわけると効果があがります。
たくさんの写真を見ていて気がついたことは、おなじタマン族でも、標高によってあきらかに表情がちがうということです。標高つまり気候(自然環境)によって人々の表情に傾向があり、それが見事にとらえられています。
「表情がかたいですね。標高は何メートルくらいですか」
「2000メートルをこえています」
「さむいところで暮らす人々ですね」
標高が高くきびしい気候(環境)で暮らしている人々の表情は、あたたかい所で暮らしている人々とちがってかなりひきしまった表情をしています。高度差がもたらす多様な環境とそれに適応して暮らす様々な民族が見てとれました。多様な環境と様々な民族こそ、ネパールやヒマラヤの最大の魅力でありおもしろさであることを再認識しました。
このような写真が撮れるのは、近藤さんがプロの写真家であることもありますが、それだけでなく、同じ地域に何回も入って、ヒマラヤの斜面をたえず上下しながらみずからの体験をふかめ、理解をふかめ、表面的にはとらえられないその地域の本質をさぐっているからでしょう。近藤さんとタマンの人々のとりくみは、「フィールド」をしっかり決めて、泥臭く、ふかくくいこむやりかたです。
様々な情報が比較的簡単に手に入る時代になって、ひろくあさく何でも見てやろうと次々に場所をかえていく探検的な行き方は重要視されなくなり、今回のようなローカルにふかくくいこむやり方がおもしろい時代になってきました。
1985年、ヒマラヤの氷河湖の一つ、ディグ・ツォ湖が決壊した
1985年、ヒマラヤの氷河湖の一つ、ディグ・ツォ湖が決壊したときには、下流の水力発電所や橋が破壊され、農地や住宅が流されて、少なくとも20人の命がうばわれました(注)。
(注)「迫りくる温暖化の驚異」ナショナル ジオグラフィック日本版 特別編集版、2007年。
(注)「迫りくる温暖化の驚異」ナショナル ジオグラフィック日本版 特別編集版、2007年。
河口慧海の足跡をつかむ
『季刊民族学』119号(財団法人千里文化財団)では、「河口慧海の道」を特集しています。
2004年に発見された「河口慧海日記」を第一線の研究者が克明に読み解き、多数のカラー写真とともに紹介しています。謎につつまれていた河口慧海の足跡の全貌をつかむための好著となっています。
2004年に発見された「河口慧海日記」を第一線の研究者が克明に読み解き、多数のカラー写真とともに紹介しています。謎につつまれていた河口慧海の足跡の全貌をつかむための好著となっています。
